イタリア関連⑤ トゥルッリ
南イタリアの Alberobello を訪れると、白い壁ととんがり帽子のような屋根の家が並ぶ独特の景色が広がります。この建物は「トゥルッリ」と呼ばれる伝統的な家屋で、町全体が世界遺産にも登録されています。しかし、この可愛らしい建物には税金制度と封建社会が生んだ意外な歴史が隠されています。
トゥルッリとは
イタリア南部プーリア州にある町、Alberobello。
この町は、トゥルッリ(Trulli)と呼ばれる独特の家屋で世界的に知られています。
トゥルッリとは、石を積み上げて作られた円錐形の屋根を持つ伝統的な建物のことです。白い壁ととんがり帽子のような屋根が並ぶ景色はとても可愛らしく、アルベロベッロを象徴する風景となっています。
町の郷土博物館では、このトゥルッリの歴史について紹介されています。その中でも特に重要な建物が、現在博物館として公開されているトゥルッロ・ソヴラーノ(Trullo Sovrano)です。
トゥルッリ誕生の意外な理由
一見すると可愛らしいトゥルッリですが、その背景には少し意外な歴史があります。
実はこの建築様式は、税金制度をきっかけに生まれたといわれています。
16世紀、この地域はアックアヴィーヴァ・ダラゴーナ家という封建領主によって支配されていました。
当時、神聖ローマ皇帝カール5世(Charles V, Holy Roman Emperor)は1535年に 「Prammatica de Baronibus」 という制度を発布します。この制度では、王の許可なく町を形成すると領主が税金を支払わなければならないと定められていました。
つまり正式な町ができてしまうと、領主は王に税を納める必要があったのです。
「町ではない町」
そこで領主は税金を避けるため、住民にモルタルを使わない石積みの家を建てるよう命じました。
モルタル(※)を使わない建物は簡単に解体できます。
もし王の役人が調査に来ても、建物をすぐに壊してしまえば、「ここには町が存在しない」と見せることができたのです。
つまりアルベロベッロは、人は住んでいるのに、形式上は町ではない場所として存在していました。このためアルベロベッロは、「税金逃れの町」とも呼ばれることがあります。また、この状況は約300年もの間続いたといわれています。
※モルタルとは、石やレンガを固定するための接着剤のような材料
トゥルッロ・ソヴラーノ
18世紀半ばになると封建制度が弱まり、アルベロベッロは正式な町として認められるようになります。
その過渡期に建てられた象徴的な建物がトゥルッロ・ソヴラーノ(Trullo Sovrano)です。
この建物は1700年代前半、裕福な一家によって建設されたとされています。もともとは「教皇カタルドの館」と呼ばれていました。
建物の特徴は、屋内に壁造りの階段があり、地上階から上階へ上ることができる点です。これはトゥルッリの中でも珍しい構造で、モルタルを使用した建築としては最も古い例の一つとされています。
現在の建物の左側部分が最も古い部分で、その歴史は1600年代初頭までさかのぼると考えられています。
建物が果たしてきたさまざまな役割
1800年代初頭には、アルベロベッロの守護聖人である
聖コスマ(Saint Cosmas)と聖ダミアーノ(Saint Damian)の聖像が安置されました。
1826年からは宗教団体の拠点として使われ、その後も長い歴史の中で
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領主の居城
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礼拝堂
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薬局
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修道院
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集会場
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住居
など、さまざまな役割を果たしてきました。
19世紀末にはスメラーノ家の所有となり、建物は一家の住居として使われます。
現在残っている家具や生活用品の多くは、当時実際に使用されていたものです。
その後1909年には法律によって文化財として保護され、1923年にはイタリア国家の文化遺産に指定されました。
世界遺産となったトゥルッリの町
そして1996年12月7日、アルベロベッロのトゥルッリの町並みは
UNESCOの世界遺産に登録されました。
世界遺産に登録された理由は、
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石を積み上げて作る独特の建築技術
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町全体がその建築様式の景観を保っていること
にあります。
またトゥルッリの屋根には、白い石灰で描かれたさまざまな記号を見ることができます。
十字架、星、太陽などの図形が多く、これらは宗教的・神秘的な意味を持つ魔除けや幸運の象徴だと考えられています。
可愛らしい建物の裏にある歴史
このようにアルベロベッロのトゥルッリは、単なる可愛らしい観光建築ではありません。
封建制度や税制度という歴史の中で生まれ、人々の生活と結びつきながら発展してきた建築文化です。
現在もアルベロベッロの町並みは、人々の暮らしと歴史を伝える文化遺産として世界中から高く評価されています。
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